こんにちは、一般社団法人ドーピング0会・代表理事の吉田哲朗です。
2024年6月18日(火)の夜、ドーピング0会の勉強会として、日本体育大学運動生理学教室の須永美歌子先生をお招きし、「性差を考慮したコンディショニング法の開発をめざして」というテーマでご講演いただきました。
講演はオンライン形式で実施され、20時30分〜22時までの約90分間、全国の会員が画面越しに熱心に耳を傾けました。
今回は、特に女性アスリートを取り巻く環境と性差の理解にフォーカスを当てた内容で、これまでにない学びの多い時間となりました。
なぜ今、女性アスリートに関する正しい知識が求められているのか
スポーツ医学や運動生理学、スポーツのパフォーマンスに関する研究の多くは、これまで「男性」を中心に行われてきました。
実際に、トレーニングや栄養、リカバリーに関するエビデンスの大半は男性被験者を対象としたものであり、女性特有の生理的特性や月経周期に応じたコンディショニングに関するデータはまだまだ限定的です。
こうした現状に対し、須永先生は「性差に基づいた研究とアプローチの重要性」を明確に指摘されました。
月経周期によるホルモンの変動や、思春期における成長・発育と運動負荷の関係、さらにはスポーツ現場での対応に必要な視点など、女性アスリートが直面する課題について、科学的なデータに基づきながらも、現場目線で語られた内容は非常に説得力がありました。
学びのポイント:「性差に基づく支援」がアスリートを守る
講義の中で印象的だったのは、須永先生が「理論と現場の橋渡しをしたい」と語られていたこと。
アカデミックな知見をいかに現場の指導や支援に活かすか——その姿勢はまさに、私たちドーピング0会の活動理念とも重なります。
例えば
- 月経周期とパフォーマンスの関連性
- ピルやホルモン療法のスポーツ現場における使用実態
- 女性アスリートに特有の「無月経・骨粗しょう症・栄養障害(いわゆる女性アスリートの三主徴)」に対する支援方法
など、日々アスリートと接する指導者や医療職にとって実践的な知識を数多くご紹介いただきました。
参加者の声から見えた“学びの衝撃”
今回の講演に参加された皆さまからは、講義後に続々と感想が寄せられました。その中でも特に多かったのが
「これまで女性アスリートについて、ここまで体系的に学んだことがなかった」
「性差に基づいた支援の重要性がよく理解できた」
「現場で活かせる具体的なアプローチを学べた」
という声です。
とりわけ、指導者やスポーツ現場で働く医療職の方々からは、「こうした知見を早く知っていれば救えたかもしれない事例があった」といった、リアルな実感も共有されました。
性別を“違い”ではなく“理解すべき特徴”として捉え、そこに寄り添う支援のあり方を再認識する時間となりました。
書籍のご紹介:「女性アスリートの教科書」
須永先生は、2023年に発行された書籍『女性アスリートの教科書』の著者でもあり、講演中もその一部内容に触れていただきました。
この書籍は、現場で女性アスリートを支える立場のすべての人にとって必読ともいえる一冊であり、「性周期・ホルモン・栄養・メンタル・リスク」など幅広い視点からまとめられています。
今回の講義をきっかけに、さらに深く学びを深めたい方は、ぜひ一度ご覧いただければと思います。
最後に:女性アスリートを支えるために、今できること
私たちドーピング0会は、アスリートを守るための知識とつながりを広げることを目的に、多職種連携を軸とした学びの場を継続的に提供しています。
今回の須永先生の講義を通じて、「女性であること」を前提にした支援の必要性、そしてその支援を担うための専門的な知識の習得がいかに重要かを、改めて強く感じました。
性別に関係なく、すべてのアスリートが安心してスポーツに取り組める環境を整えるために、私たちも引き続き活動を続けてまいります。
須永先生、このたびは貴重なお話を本当にありがとうございました。
そしてご参加いただいた皆さまも、引き続き学びを現場につなげる仲間として、どうぞよろしくお願いいたします。